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クライアントの役割

最近僕はしばしばクライアントである。残念ながら家を建てるわけではなく、家具デザインやグラフィックを依頼するメーカー、あるいは設計事務所としてである。クライアントの立場になると発注者側での重要な役割が見えてくる。そうした中で、建築におけるクライアントと設計者の関係は若干歪みがあること気づき始めている。その最たるものが「お施主様」というクライアントの呼称である。僕がクライアントとしてデザイナーにデザインを頼むとき、彼らは僕のことを決して「お施主様」とは言わない。当たり前だと思えるかもしれないが、建築の世界では、しばしばクライアントを「お施主様」と呼ぶ。ついでに言っておくと契約関係のない設計事務所と工事会社と間で、アーキテクトが「先生」と呼ばれる。僕はこれらの慣習が結果として大きな損失に繋がっていると思っている。はっきりいって面倒だし、弊害もあるのでここでしっかり書いておきたい。

たとえ話を書いてみる。出資を集め宝を探しに行くキャプテンは操縦士を始め多くのスタッフが必要になる。キャプテンは長旅においてチームの士気をあげるために、腕のいいコックやミュージシャンを同船させたほうがいいだろう。キャプテンは宝を探すために最高のチームを作ることが成功の近道だ。
このとき操縦士、コック、ミュージシャンは上下関係で結ばれるよりもパートナーであるほうがいい。そもそもリスクのある航海である。裏切りなどのリスクはつきまとう。宝は経費を除き4分割すると宣言すれば士気はさらに上がる。とはいえ船を持ち、計画を企てたキャプテンは様々なリスクを背負っている。だから会計を明示した上で報酬という形でコラボレーター契約することが望ましいだろう。パートナーである彼らは上下関係で結ばれた契約より遥かに素晴らしい仕事をするだろう。これは意匠設計者と構造設計者の関係に似ている。

さて話を建築のクライアントと設計者に戻す。クライアントにとっての最大の利益は最高のデザイン、家、建築である。宝探しと構図を重ねてみる。クライアント/キャプテンは良きチームを作ることが求められるだろう。建築はしばしば旅に例えられるほど時間がかかる。住宅ですら設計か竣工まで2年近くかかることもある。設計者は操縦士でありパートナーだ。正しい道程を探り、遂行するのが役割だ。キャプテンと相談し予算や船の大きさなどを吟味。どこまで遠出ができるのか、どれだけの財宝つめるのか、工程のリスクをチェックすることが求められる。時に才能があり、想像力豊かなキャプテンは船を操縦したくなるかもしれない。がしかし、もちろんキャプテンは操縦桿を握るべきではない。熟練の操縦士は、一見戸惑っているように見えて、最高の工程を臨機応変に組み立てている可能性もある。全体工程のコンセプト共有は必要だが、基本的に操縦は専門家に任せるべきだろう。だれも寿司カウンターの向こう側に行き、寿司を握ることが得策だとは思わないはずだ。キャプテンは大事なことをあらゆる局面で正しい決断をする準備をする必要がある。さらに大事なのは全体の士気が下げないことがキャプテンの役割である。良きチーム時に個性派揃いでコントロールが難しい。いかに最高の仕事をしてもらうか、頭を使うべきだろう。まだまだ書き連ねることができるが、キャプテンの役割は大きくコントロールし、才能豊かなチームを信頼することでプロジェクトを成功させることだ。

話を戻す。「お施主様」文化においては、「お施主様」の意向が最大化される。仮にそれが美しくなくても、チグハグでも、理にかなってなくても、最高の結果を求めるはずのチームはただ垂れ流される意見に従うチームへと成り下がる。思ったこと正しいことを言えないうなだれた設計者は現場で「先生」と呼ばれ少し自信を取り戻す。現場と先生は結託して、「お施主様」の意向さえ聞けばいいチームとなる。このチームが「お施主様」にとってあらゆる意味においてマイナスであり、危険でもある。

そろそろ結論を書く。あくまで理想の話として。
クライアントにおいてするべき本当の仕事は良きチームをつくり、チームのモチベーションをどこまで引き上げることができるのかだろう。もちろんこの役割をチーム全体に委ねることもできる。大事なことは素晴らしい結果のために、チームで動いている認識をして努力をすることなのだろう。チームで働いたことの経験があるクライアントであれば、スタッフや下請けの頭を押さえつけて、「働け!働け!」と言ってもなに一ついい仕事はうまれないことは知っているはずだ。「お施主様」と呼ばれて悪い気はしないかもしれない。僕も正直「先生」と呼ばれると思わず気が緩む。しかしながら、この立場に安住している限り、いい仕事はチームから生まれにくい。チームができた段階でゴールとゴールへの方法論を一度チームで話し合うといいのではないかと思っている。そして「お施主様」と呼ぶのも呼ばれるのも辞めるべきだろう。

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